対人関係療法とは
対人関係療法
対人関係療法は、対人関係のストレスを解決する治療法であると同時に、対人関係の力を利用して病気を治す治療法です。対人関係療法は、その医学的な治療効果が実証されているのみならず、クラインアントさんやご家族や周りの人たちの人間関係を良好なものに変えてくれる治療法でもあります。
対人関係療法のその特徴は、病気の原因について何ら仮説を立てず、患者が何をきっかけにして発症することが多いのかという観察に基づき、すでに行われている治療の有効な部分を体系化しようとして作られたというところにあります。
対人関係療法では、精神科的障害は、その原因がどれほど多元的であろうと、通常は何らかの対人関係状況の中で起こるものであり、発症・治療への反応、転帰は、うつ病患者と「重要な他者」との間の対人関係の影響を受けると考え、また、社会的役割と精神病理との関係は双方向で生じるものであり、社会的役割の障害が疾病のきっかけになると同時に、疾病によって社会的な役割が障害されると考えています。
対人関係療法の原点
対人関係療法(IPT: Interpersonal Psychotherapy)は、現在の対人関係に焦点をあてた短期精神療法です。本来はうつ病患者の治療用に、米国の精神科医クラーマン博士らが1960年代後半から開発したものです。クラーマンらは、精神療法も薬と同じように効果をきちんと検証してから普及させるべきだというふうに考えていたため、対人関係療法は、臨床研究を通して発展し、効果ついてのデータは他に類を見ないほど充実しています。
1969年当時は、三環系抗うつ薬の効果のエビデンスが強かったのですが、同時に三環系抗うつ薬による治療の終結期にうつ病が再燃するということも明らかになっていました。薬物療法をどの程度継続させるべきか、そして再発予防において精神療法が果たす役割はあるのか、ということが明らかになっていませんでした。そこで、クラークマンは、うつ病の維持治療を、三環系抗うつ薬単独で行う場合と、精神療法を併用する場合の効果を比較する研究を始めたのでした。
そのようにして、クラークマンは、薬物療法と精神療法を併用すると何が起こるのか、ということをデータ上明らかにしていき、それが対人関係療法開発の原点となっているのです。
対人関係療法の基本的な考え方
対人関係療法の重要な他者への焦点化
一般に精神療法においては、焦点を絞り込めば絞り込むほど短期に効果が上がってきます。「対人関係に焦点を当てる」といっても、「対人関係なら何でも」というふうに焦点を拡散してしまうと、幼い頃の対人関係や、いろいろな友人との対人関係など、次から次へと話題が出てきてしまい、長期にわたってしまいます。一方、対人関係の中でもテーマを絞り込めば、短期で効果を得てカウンセリングを終了させることができます。
対人関係療法は、「重要な他者」との「現在の」関係に焦点を当ててカウンセリングしていくものです。また、単に焦点を当てるのではなく、そこで問題になっていることを四つのテーマのうちの一つに分類し、それぞれの戦略に従ってカウンセリングをしていく、というふうにある程度マニュアル化されています。療法がきちんと定義されているので、効果のデータも正確にとることができ、有効性が検証されています。精神療法の中でも、有効性を証明するデータがもっとも多い療法であるといえます。
対人関係療法の戦略と医学モデル
対人関係療法の特徴はその治療戦略にあります。治療戦略はマニュアル化されており、初期・中期・終結期それぞれの課題が規定されています。
そして、対人関係療法の戦略には、医学モデルを採用すること、4つの問題領域から1つか2つを選んで治療焦点化することと、期間限定治療という枠組みを活用するということがあります。
対人関係療法でいうところの医学モデルとは、患者は病気であり、病気は治すことができるという考え方です。医学モデルを明確にするために、患者に「病者の役割」を与えることも重要な戦略のひとつになっています。
対人関係療法は、うつ病と摂食障害に有効な療法
対人関係療法は、もともとはうつ病の治療法として開発されたものですが、そのあと、摂食障害(拒食症や過食症など)や外傷後ストレス障害(PTSD)など、さまざまな状態に対する治療法として手を加えられてきています。日本以外の国ではよく知られた治療法であり、とくに、開発国のアメリカでは、1995年の消費者ガイドで支持されたことによって一般にもその存在が大きく知られるようになり、アメリカ精神医学界のうつ病の治療ガイドラインでも、有効な治療法として位置づけられています。近年では、グループ療法のスタイルも開発され、電話面接のスタイル、予防法としての活用など、さまざまな可能性が試みられています。
(水島広子著: 「対人関係療法マスターブック」参照)
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